小児集団のための医薬品開発は、全体の医薬品開発および全医療的ニーズと比べると少数派であり、企業にとっても新薬開発のような利益が望めないことから二の足を踏むことが多い。可能であれば開発にかける時間や労力、費用も最小限に抑えたい。これらの状況を打開するための手段として、産学連携があり、アカデミア・臨床現場と企業の双方が協力していくことが、小児医薬品開発に貢献すると考えられる。
 また特に、小児の中でもspecial population (特殊集団)と呼ばれる「早産児」「低出生体重児」「肥満児」「各特殊病態下の児」等では、開発段階における臨床試験が行われず、臨床現場での裁量および限られた情報から用法用量を模索し患児に施用されることが多い。その中でファーマコメトリクスの活用は、これら特殊集団の小児薬物動態・薬力学的作用の理解や至適用量の設計に大きく貢献することが期待されている。臨床現場における活用はもとより、これら臨床データや疾患自然歴の共有は、生理学的薬物速度論モデル解析や、定量システム薬理学を活用した小児医薬品開発にも貢献すると考える。また産学連携、具体的にはアカデミアおよび企業との臨床データ共有やデータ解析部門の協業は、臨床現場のニーズを反映した小児特殊集団の医薬品開発を可能とするかもしれない。一方で、リアルワールドデータを含む情報の共有・利活用は、承認情報に耐えうるような必要とされる情報が不足する可能性があるなど、データ二次利用に限界があるのも事実である。また新たな小児医薬品開発のスキームとして、各製薬会社と臨床現場のニーズを共有し連携した開発を行っていくためには、事例を少しずつ積み重ねていくことが重要と考える。
 本シンポジウムでは事例創出に向けた当センターでの取り組みを共有したい。