医薬品開発における国際共同治験(MRCT)の活用は、海外臨床データの適切な活用法の一つであり、症例数等の点から臨床試験の実施可能性が制限され得る本邦において、効率的な医薬品の実用化を促進する上で非常に重要である。これまで、本邦ではMRCTへの日本の積極的な参加を推進する観点から通知等を発出してきたが、世界各地域での承認申請においてMRCTの受け入れ可能性を高めるため、国際的に調和されたMRCTの計画及びデザインの一般原則を示す必要性が高まり、日本からの働きかけによりICH E17の作成が進められた。ICH E17はMRCTを適切に計画するための基本的な考え方を示すものであり、試験計画時に考慮すべき重要な内容を含む一方、単一の解決策(手法)や絶対的な基準を示すものではなく、また、扱う範囲が試験計画の多岐にわたることから全体の趣旨が把握しにくいといった課題もみられる。ICH E17の内容を正しく理解し、適切なデザインのMRCTを計画、実施することは、効率的な医薬品開発を可能とし、日本のみならず全ての地域にとっても有益なアプローチとなり得る。MRCTを活用した承認申請の審査においては、ICH E17では言及されていない、MRCTの結果の評価(一貫性の評価)や解釈を正しく行う必要がある。これまで本邦では多くの新薬がMRCTを活用して承認されており、これらの医薬品の審査事例を踏まえて、本邦におけるMRCT計画時、及び評価時に考慮すべき事項等を紹介する。