アルツハイマー病の特徴として、アミロイド-β(Aβ)ペプチドの蓄積が知られている。Donanemab は、脳内アミロイドプラークにのみ存在するN 末端がピログルタミル化されたエピトープに特異的な抗体であり、アルツハイマー病(AD)の治療のために開発を進めている。 Donanemabの第2相試験(TRAILBLAZER-ALZ試験; NCT03367403)は陽電子放出断層撮影(positron-emission tomography:PET)でアミロイド及びタウ病理が確認された早期症候性AD患者を対象に実施された。被験者はdonanemab(最初の3回を700mgで、その後は1400mgを4週毎に最大76週間)、又はプラセボ(PBO)に1:1 の比率で無作為に割り付けた。主要評価項目はIntegrated Alzheimer's Disease Rating Scale(iADRS)スコアの72週時のベースラインからの変化量とした。加えて、donanemab投与によるアミロイドプラーク及び血漿中P-tau217減少、さらにタウ病理についても解析した。 登録された257名のうち、131名がdonanemab、126名がPBOに割りつけられた。ベースラインのiADRSスコアは両群で106であった。投与開始36週目という早い時期に、iADRSの低下に有意な差が確認された。76週時のiADRSスコアのベースラインからの変化量は、donanemabで-6.86、PBOで-10.06であった(群間差, 3.20; 95%信頼区間, 0.12~6.27; P = 0.04)。Donanemabの投与を受けた被験者の内、40%が24週目までに、68%が76週間までに規定したアミロイド陰性レベルとなった。Donanemabの投与により、12週以内で血漿P-tau217の急速な減少が認められ、血漿P-tau217の変化は、PETによるアミロイドプラークの減少との相関が確認された。加えて、アミロイド関連画像異常‐浮腫/滲出液貯留(主に無症候性)がdonanemab投与群に26.7%で発現した。 早期症候性ADにおけるdonanemabの更なる有効性と安全性の検証を目的に、第3相試験であるTRAILBLAZER-ALZ2(NCT04437511)試験を現在実施中である。