デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation: DX)は、ビジネスシーン、経済活動に限らず、社会全体での推進が期待されており、本邦では2021年9月の「デジタル社会形成基本法」の施行に伴いデジタル庁が発足している。経済産業省は、2018年に「DX推進ガイドライン」を策定し、DXを次のように定義している。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
臨床研究の分野においても、デジタルツールの導入は、これまでにも業務の効率化や試験の品質の担保に寄与してきたが、最近では、多様なデジタル技術やICTの組み合わせにより業務のリモート化も進み、また様々なデータソースが臨床試験データとして活用される中で、Decentrized Clinical Trial(DCT)のようなこれまでにない臨床研究の実施方法が可能となり、新しい価値が創造されている。本発表では、シンポジウムの導入の発表として、DXや関連する用語の定義を整理し、臨床研究の分野でどのような変革が起きているのか、総論する。