2000年代初頭に本格的な情報化社会として新たな価値基準を受け入れた先進諸国は、2010年代からロボット工学、人工知能 (AI) 、ブロックチェーン、量子コンピュータ、モノのインターネット (IoT) などの製造業における技術革新(第四次産業革命Fourth Industrial Revolution: 4IR)によりデータ駆動型社会(Data-Driven-Society:DDS)へと発展し、その立役者たる情報自体もこれまでの価値創造の付加的存在から産業の中心的存在へとその存在価値を高めたといえる。
製薬業界においては医薬品=化合物+データと広く認識されており、創薬の中心には常にデータが存在してきたが、その集積にはモニタリングに代表される人的関与が一定量必要とされ、DX化推進は一部に広まりつつあるものの、更なる躍進が期待されている領域でもある。また、臨床研究においてはカルテデータ、レセプトデータなどのいわゆるReal World Data(RWD)の電子化、ビッグデータ化およびその利活用が急速に進みつつあり、治験データでは得られにくい実臨床下での医療データの有用性が創薬のあらゆるステージで認められており、一昔前のRWDはエビデンスレベルが低く、利活用に値しないという概念は過去のものとなってきた一方で、その性質上存在する構造的制限は創薬のDX化推進における新たな課題をもたらしてもいる。
本セッションでは、国内のRWDの臨床研究領域における利活用に関わる制限とその応用における考慮点を整理し、DX化推進が創薬に対してどのように作用するかについて論じるとともに、第三者機関としての弊社の取組みを紹介する中でその役割について考察していく。¶