数年前から、Decentralized Clinical Trial(以下、DCT)、バーチャルトライアル、訪問治験・・・・このようなワードを見聞きするようになった方も多いのではないだろうか。その背景には、治験の実施が、より患者中心になっていったことが考えられる。そんな矢先、昨年より発生した新型コロナウイルスの世界的大流行により、医療機関への訪問なしでの治験実施へのニーズが増加し、製薬会社・CRO・サービス提供ベンダー含めて、治験におけるデジタルを活用したDCT推進の加速が止まらない。DXとは、「*企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」と定義されている。[*デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン、平成30年12月 経済産業省] デジタルを活用したDCT・バーチャル治験などの試験オペレーション方法の変革は、まさにDXである。ただ、DCTもDXもあくまでも手段の一つであることは忘れてはならない。その先には、より早く革新的な医薬品を必要としている患者の基に届けるという大きな目的が存在する。DCTにより、「多くの患者(人)にとって治験参加者の負担が少なくなり、より参加しやすい治験になること、「治験依頼者にとってもオペレーションが効率的になり、その結果、治験期間の短縮に繋げることが出来ること」、「医療機関にとっても受託した治験実施の作業が効率的になることで、スタッフを含めた医療資源の活用が向上すること」が見込まれる。本発表では、外資系製薬企業の立場から考えるDCTの価値及びGlobalを含めた社内で起きているDCTに関わる取り組みについて紹介したい。Global全体で加速しているDCT導入のうねりに日本が乗り遅れた場合、Global試験に参画できず、日本での上市タイミングの遅れにも繋がる可能性があることも踏まえて、日本における臨床開発では何ができるのか・するべきなのか、臨床薬理試験(特に早期開発)において何ができるのか・するべきなのかを考える機会にしていただきたい。