新型コロナウイルスに対するワクチン開発は、遺伝子治療技術を用いた新しいモダリティにより従来想像しえなかった速度で進んでいる。既に、ウイルスの遺伝子情報を利用したRNAワクチンは、ファイザーやモデルナにより開発され、日本でも接種が進んでいる。また、アストラゼネカ、ロシアや中国ではアデノウイルスを用いたワクチンが開発・承認されている。30年以上にわたり研究開発されてきた遺伝子治療の医学研究が、パンデミックウイルスに対し、新たな対策を生みだした一例を明確に示したといえよう。このように遺伝子治療のモダリティが大きく次世代医療を変えつつある。我々のグループは、世界で初めてのプラスミドDNAの血管再生遺伝子治療薬(コラテジェン)を2019年に上市しているが、同じプラスミドDNAのプラットフォーム技術を用いてDNAワクチン開発に取り組んでいる。他にも、国内ではKMバイオロジクスが不活化ワクチン、塩野義製薬が組み換え型ワクチン、第一三共がRNAワクチンの開発に取り組んでいる。本講演では、国内における新型コロナウイルスのワクチン開発の現状について紹介したい。