昨年からのCovid-19のパンデミックのために欧米で実施していたglobal FIH試験が中断し、比較的感染が落ち着いていた日本で私たちが後半のパートを実施するという機会がありましたので、ご紹介いたします。
 ノバルティスファーマの試験は2020年初頭に米国で試験を開始し、健康成人対象のPart Aに 2名組み入れたところでCovid-19のパンデミックのために組み入れがストップしていました。そこで私たちが続きを実施することになり、この治験で必要な皮膚生検とその標本作成のトレーニングを開始しました。いよいよ必要な準備が整った時点でモニターを介してGlobalチームに確認したところ、予想に反して米国で中断していた施設が動き出しており、Part Aはすでに終了したという返事でした。明らかなコミュニケーション不足でした。次いで皮膚疾患患者を対象としたPart Bも同様に米国で始まりましたが、やはりCovid-19のために組み入れが難航したため、急遽私たちが参加することになりました。その時点ではコミュニケーションが大幅に改善し、私たちの質問をモニターが夜間にGlobalチームに相談し、翌朝には回答をもらえるような状況になりました。Dose upなどに関しては私たちがGlobalチームと直接Web会議でディスカッションする機会があり、お互いの理解を深めることができました。戸惑ったこととしては、休薬に伴う原疾患の悪化に対してステロイド剤などを使用したくても欧米と日本で適応の基準が異なるために、治験参加前は使用できたものが制限されるということがありました。
 もう一つの試験も欧米でCovid-19のために中断していたFIH試験ですが、私たちが続きのパートを実施することになった条件として、それまでのパートとの連続性を保つために被験者の人種構成をほぼ同様にする必要がありました。つまり、白人と黒人をできるだけ同数組み入れる必要があったので、被験者募集には大変苦労しました。有害事象に関しては判断基準を統一する必要があり、前半のパートを実施したPIからWeb会議で説明を受け、大変参考になりました。
 Covid-19のお陰でWeb 会議がごく普通になり、global 試験でも地理的な距離を感じなくなりました。これを機に日本でのglobal FIH 試験の実施が増えることを願っています。