生体の様々な行動や生理機能には約24時間のリズムが認められ、概日リズム(circadian rhythm)として知られている。このリズムは薬物動態や薬力学(有効性・安全性)にも日内リズムをもたらすことが多く、薬物治療におよぼす投与時刻の影響は「時間薬理学」として従前より研究されてきた。また、時間薬理学的特徴を考慮した用法・用量で行う薬物治療は、「時間治療」として限定的ながら実践されてきた。しかし、医薬品開発における時間薬理学的検討は未だ不十分であり、時間治療の有効性の有無が不明な薬は数多い。特に最近は、時間薬理学的影響を考慮する必要のない長時間持続型の薬剤がもてはやされ、投与タイミングが限定される薬剤は敬遠される風潮にあり、危惧の念を抱かざるを得ない。
一方、近年になり細胞内体内時計の分子メカニズムが解明され、時間生物学は著しく進歩した。これに伴い、時間薬理学研究が発展するとともに、体内時計の障害と病態との関連性や体内時計を標的とした治療法にも関心が集まるようになっている。そこで本シンポジウムでは、シンポジストの先生方から様々な領域における最新の知見をご紹介いただくことにより、皆様に時間薬理学・時間治療の重要性と広範な必要性をご理解いただければ幸いです。