私達は、概日時計(時計遺伝子)が、アレルギー疾患の主たる病態であるマスト細胞や好塩基球におけるIgE 依存性およびIgE非依存性活性化反応の重要な制御因子の1つであることを明らかにした。また時計遺伝子の変異、拘束ストレス、不規則なタイミングによる給餌などにより、概日リズムを乱したマウスでは、IgEやIL-33によるマスト細胞活性化反応の日内変動が消失し常に高い反応レベルを示すことを見出した。実際、現在使用されているアレルギー疾患の主な治療薬(副腎皮質ホルモン,β2 アゴニスト,抗コリン薬、テオフィリン、抗IL-5抗体)の標的遺伝子は、実は概日リズム性の発現を示す遺伝子である。これらの知見は,アレルギー疾患と概日時計は極めて密接な関係にあることを示している。したがって、概日リズムを乱すような生活習慣の是正(睡眠障害、食事習慣、精神的ストレス、運動不足など)や適切な時間帯での投薬指導は、アレルギー診療を向上させるために極めて重要なアイデアであり、アレルギー疾患における個別化医療の実現にも繋がることが期待される。