日本は高齢人口が急速に増加しており、高齢者特有の疾患への対応がますます重要になっている。その一つに前立腺癌が挙げられる。前立腺癌は高齢とともにその割合は増加し、我が国のがん罹患率の中で、現在トップである。前立腺癌は比較的予後の良いがんで早期であれば十分根治可能であるため、年齢や併存疾患の生命予後を考慮し、治療選択が行われる。転移のない前立腺癌の治療において、手術とともに一翼を担うのが放射線治療である。近年、放射線照射時刻の違いによって、有害事象や効果に差があるというchronoradiotherapyという概念が提唱されている。その可能性について、筑波大学における前立腺癌に対する陽子線治療の結果から考察してみたい。高齢者特有の疾患としてもう一つは、夜間頻尿が挙げられる。ヒトは高齢になるにつれて夜間睡眠中に排尿のために目覚めトイレに行くようになる。60歳以上では60%以上の方がこの夜間頻尿の症状を有しており、加齢とともに増加する。夜間頻尿は下部尿路症状の中で最も悩み深い症状の一つであり、生活の質の低下のみならず、総死亡率の悪化にも関連している。夜間頻尿の原因は多因子にわたり複雑にからみあっている一方、元来排尿は日中に行い夜間はしなくてよいという日内排尿リズムがあり、それが崩れた状態が夜間頻尿と一元的に捉えることができる。この日内排尿リズムの観点から、時間治療へのアプローチについて紹介したい。