薬剤師には調剤した薬剤について必要な情報提供と薬学的知見に基づく指導を対面で行うことが義務づけられており、薬局ではこれらを対面で行うこととされてきたが、遠隔診療のニーズに対応するために国家戦略特区の実証等を踏まえた検討が行われ、薬機法に対面義務の例外としてオンライン服薬指導が設けられた。また、その施行と同時に、薬剤師法においては、調剤時に限らず必要に応じて患者の薬剤の使用状況の把握や服薬指導を行うことが義務づけられ、患者の服用期間中のフォローアップが薬剤師に求められるようになった。
薬剤師による服薬指導の義務化は患者に適正に薬剤を使用してもらうためのものであるが、薬の作用・副作用と服用方法の説明を伝えただけで薬物療法が適切に遂行できるかというとそうではない。通院や在宅での薬物療法は多くの場合、患者や家族の管理に委ねられており、生活環境だけでなく患者の状態、考えや思いが薬剤の使用に影響する。通院患者を対象とした服薬状況の調査からは、指示どおりに薬剤を服用・使用している患者は半数以下であることがうかがえ、適切ではない薬物療法によって入院に至る事例も報告されている。患者や家族の管理下にある交付後の薬剤をフォローするためには、これまでとは異なるコミュニケーションの取り方が求められる。現在、来局時に加えて電話等でのフォローを行う薬局が増えているが、薬剤師が次の受診までの間に電話でフォローアップをすることで、調剤時のみよりも多くの情報を得ることができ、患者からの相談や問題に対応できること等が報告されており、薬物療法の安全性と有効性の確保につながることが期待できる。
薬剤師が服用期間中に問題が生じていないかを確認し、問題があった場合にはその原因を特定して解決方法を提案するといった関わり方が今後ますます重要になると考えられるが、多くの患者にそういった関わり方をしていくには、過度な負担なく相互にコミュニケーションがとれる環境が必要である。また、薬剤を適正に使用すること、医療者に相談することなどの患者側の行動を促していくことも必要である。デジタル技術が課題解決の一翼を担うことが期待できるが、技術による効率化とともに、患者が薬剤師に当たり前のように相談できる環境が定着することを願う。