(目的)神経炎症を生体内でイメージングすることを目指し、神経炎症時にアストロサイト内で発現量が上昇するグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を標的としたポジトロン断層法(PET)薬剤を開発する。
(方法)GFAP特異的に結合するアフィニティタンパク質であるVHH-E9に脳透過性ペプチドを融合させ、フッ素18で標識した分子18F-E9-ApoEを作製した。また、野生型ラットの脳片側線条体にリポ多糖(LPS)を投与した神経炎症モデルラットを作製し、左右の脳のGFAP発現量の違いを検証した。18F-E9-ApoEを用いて、モデルラットの脳切片上でオートラジオグラフィーを実施するととともに、モデルラットへの尾静脈投与によってPETイメージングを試みた。
(結果)18F-E9-ApoEの合成、神経炎症モデルラットの作製に成功した。合成した18-E9-ApoEはモデルラットの脳切片上でGFAPに結合し、神経炎症の左右差を描出した。しかし、PET画像上ではバックグラウンドの高さから投与3時間後に左右差を描出するに至らなかった。
(結論)18F-E9-ApoEは神経炎症モデルラット脳切片のGFAPに結合し、その神経炎症の左右差を描出するが、その左右差をPETで画像化することは現状できていない。投与経路や分子設計、PETスキャンの時間を工夫することで、モデルラットの画像化を今後目指していきたい。