本格的な超高齢社会を迎え、アルツハイマー病等の認知症に対する適切な治療方法ならびに予防方法の開発が急務である。プラズマローゲンは生体脂質の一つでありアルツハイマー病患者脳における減少が報告される等、アルツハイマー病との関連が指摘されているが、その機能についてはいまだ不明な点も多い。本研究では神経モデル細胞であるPC12細胞における神経突起伸展作用およびN-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体遮断薬誘発性記憶障害に対する改善効果について検討を行った。
 ホヤから抽出したプラズマローゲンを24-72時間PC12細胞に処置することにより、時間依存的な神経突起の伸展が観察された。神経突起の伸展に関与するCRE, SREおよびAP-1依存的な転写活性をレポータージーンアッセイにより検討したところ、プラズマローゲン処置により濃度依存的な転写活性の上昇が見られた。マウスを用いてNMDA受容体遮断薬により誘発される記憶障害に対する効果を受動的回避試験により検討したところ、プラズマローゲンの経口投与により記憶障害は改善された。以上の結果より、ホヤ由来プラズマローゲンは神経突起伸展作用および記憶障害改善効果を有する事が示唆された。