ラクトフェリン(LF)は母乳含有タンパク質であり、抗菌作用や免疫調節作用等が報告されている一方、中枢神経系への効果も示唆されている。我々は、これまでにうつ病様モデルマウスの行動変化に対してLFの改善作用を明らかにしたが、その作用機序には不明な点が多い。本研究では、ラット副腎褐色細胞腫由来PC12細胞を用い、神経突起伸長に対するLFの効果とその作用機序について検討した。
PC12細胞に神経成長因子(NGF)またはLF(100-1000μg/mL)を添加し、最大72時間処理した。神経突起伸長作用の評価は、NGFまたはLF処理後24時間及び72時間に実施した。リン酸化ERKの発現量はウエスタンブロット法を用い、TrkA受容体阻害(AG879)及びリン酸化ERK阻害剤(PD98059)を用いて検討した。
NGF処理後72時間において神経突起は有意に増加し、LF処理群においても同様の結果が得られた。リン酸化ERKの発現量はLF処理後5分で最大となった一方、AG879とPD98059処理によって有意に抑制された。以上より、LFの単独処理はNGF様作用を有することが明らかとなり、その作用機序はTrkA受容体を介したMAPK経路であることが示唆された。