(目的)本研究では,ポンカン果皮粉末(PP)とエゴマ油(PO)の長期摂取が高齢者の認知機能に及ぼす効果を検証した.
(方法)島根県在住の健常高齢者(49名:60-85歳)をPO摂取群(PO群:24名,平均70.2歳)とPO+PP摂取群(POPP群:25名,平均68.7歳)の2群にランダムに割付けた.PO群は1.47 mL(α-リノレン酸「ALA」0.88 g/日相当)のPOを,POPP群は1.47 mLのPOと1.12 g のPP(ノビレチン 2.91 mg/日相当)を12ヶ月摂取した.介入前後に認知機能検査・身体計測・採血を行った.認知機能検査には,ミニメンタルステート検査(MMSE),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R),日本語版Montreal Cognitive Assessment (MoCA-J)を用いた.また,赤血球膜ALA,血清抗酸化能(BAP),血清脳由来神経栄養因子(BDNF)測定や,血液生化学検査を行った.
(結果)POPP群のMMSE totalスコアは介入により有意に増加した.POやPOPPの摂取によりMMSEサブアイテム「注意・計算」・「言語」,HDS-Rサブアイテム「連続引算」,MoCa-Jサブアイテム「短期記憶」が有意に改善した.さらに,PO群やPOPP群の赤血球膜ALAレベル,血清BAPおよび血清BDNF濃度が有意に増加した.各群の体組成や血液生化学検査値は介入により変化しなかった。
(結論)POやPOPPの長期摂取は高齢者の酸化ストレス緩和やBDNFの増加を介して,認知機能を改善することを示唆する.