【目的】好中球/リンパ球比(NLR)はがん免疫療法の予後予測マーカーとして注目され、イピリムマブ(Ipi)を投与された欧米の悪性黒色腫患者ではNLR>5が予後不良と相関することが知られている。しかし、日本人における有用性は十分に検討されていない。そこで、名古屋大学医学部附属病院でIpiを投与された悪性黒色腫患者を対象とし、投与前NLRがIpi投与回数に及ぼす影響を調査した。【方法】2015年8月から2021年11月までを調査期間とし、Ipi投与回数、NLR等を電子カルテから後方視的に調査した。対象患者をIpi1,2回投与群と3,4回投与群に分け比較した。統計解析にはSPSS ver28を用いた。(承認番号:2022-0056)【結果】投与前NLRは1,2回投与群で有意に高値であり、カットオフ値はNLR>3.4であった。また、ニボルマブ(Nivo)併用の有無に関わらずNLR>3.4はIpi早期中止のリスク因子であり(OR=15.6、p=0.001)、無増悪生存期間(PFS)の短縮と有意に関連していた(p=0.003)。【結論】日本人集団においてNLR>3.4の患者はNivo併用に関わらず、Ipi早期中止のリスクが高く、十分な治療効果が得られない可能性が示唆された。本研究で得られたNLRのカットオフ値は欧米よりも低値であり人種差が存在する可能性が考えられた。