症例:72歳女性.主訴:全身性浮腫. 現病歴:2型糖尿病のため投薬を受けている.新型コロナワクチン初回接種の一週後に顔面と四肢に浮腫が出現した.かかりつけ医で炎症反応上昇と貧血を伴う両側胸水貯留を指摘され当院を紹介受診し,精査のため入院した.臨床経過:入院後に尿蛋白が増加し,ネフローゼ症候群の病型を成した.血清クレアチニン 2.02 mg/dLの腎障害を合併し,検尿で赤血球円柱が出現した.第14病日に腎生検を行った結果,壊死性半月体形成を伴う管内増殖性糸球体腎炎の病理像であった.ステロイド・パルス療法により初回寛解導入し,部分寛解を得て外来治療に移行した.考察:新型コロナワクチンの有用性は確立されたものであるが,mRNAワクチン接種に続発する腎疾患やリウマチ性疾患の増悪ないし新規発症の報告が相次いでいる.その機序と因果関係の大部分は未だ明らかでないが,コロナ禍となり3年経過,知見が集積されてきた現状について,症例を通じ,文献的考察を交えて報告する.