【症例】89歳女性【主訴】発熱、全身倦怠感【既往歴】NSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息)、慢性心不全、胃癌、盲腸癌【現病歴】グループホーム入所中のところ、体動時の息切れは常態化していた。X年7月7日頃より全身倦怠感あるも発熱なし。7月8日には37℃台の発熱があり、市販薬の解熱鎮痛剤を使用し、その後は解熱。7月9日酸素飽和度の低下を指摘されるも、本人は自覚症状が乏しかった。7月10日になり安静時にも呼吸困難感あり、増強するため当院救急外来受診、呼吸器症状が強く入院加療の方針となる。【身体所見】眼球結膜 黄染なし、頚部リンパ節触知せず、左下肺 coarse crackle聴取、両側でwheeze聴取。両下肢に pitting edema認める。【検査結果】WBC 11,200/μL (Neut 76%, Lymph 11%, eosino 0.5%), Hb 7.9g/dL, Plt 27.7万/μL, CRP 20.1mg/dL, BNP 480pg/mL【胸部CT】左上葉背側、左下葉背側の濃度上昇あり、【心エコー】EF 53.7%、E/e@apos@ 15、左室壁運動低下なし【経過】慢性心不全(HFpEF, StageC)に伴う体液貯留傾向があり、急性肺炎を合併した症例と考えられた。急性肺炎については抗菌薬(SBT/ABPC)を使用するとともに、利尿薬を併用することで全身うっ血の改善を図った。抗菌薬使用開始後に解熱・炎症反応の軽減を認め、また、うっ血解除に伴い下腿浮腫軽減、体重減少を認めるも、咳嗽、体動時呼吸困難感は持続した。短期間にステロイド靜注(デキサメタゾン)を使用することで、症状の改善を得るに至った。常用薬剤の中には、ジクロフェナクナトリウム塗布薬やフェルビナク貼付薬があり、常態化していた呼吸困難にも影響していたと考えられ、同薬は入院時には全て中止とし、退院以後については前医に依頼し中止継続となった。【考察】慢性心不全合併NSAIDs過敏喘息を基礎に持つ患者さんで急性肺炎を発症した症例である。肺炎の治療、心不全に対する利尿薬を行いながらも持続する呼吸困難感から気管支喘息の病態への関与を疑い、デキサメタゾンを使用した。NSAIDsは貼付薬・塗布薬であってもNSAIDs過敏喘息については症状悪化に加担し、本患者においては慢性心不全(HFpEF)の症状増悪にも寄与した可能性がある。ポリファーマシーになりがちな高齢者では使用薬剤を吟味し、特にアレルギーや既往を確認の上で不適切処方は厳に慎むべきである。【結語】NSAIDs貼付薬・塗布薬の常用による呼吸器症状遷延が示唆された慢性心不全合併NSAIDs過敏喘息を有する急性肺炎の1例を経験した。急性肺炎に対する治療に関わらず、症状の改善が乏しい際にはオーバーラップした他の病態の存在を考慮し、解決の糸口を探る必要がある。