虚血性心疾患患者に対するスタチンを用いた低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C) 値低下療法の心血管事故抑制効果は我が国をはじめ報告されてきた。また、大規模試験で の報告も多い。検討されてきた。我々も、LDL-C 低下療法によるプラークへの影響につい て血管内イメージングを用いたメカニズムについて研究されている。
我々のグループでは、積極的な脂質低下療法の意義について研究を続け、ストロングス タチンの低用量、高容量による効果について比較検討しALTAIR 試験として報告した。虚 血性心疾患患者に対してロスバスタチン2.5 ㎎または20 ㎎の2 群において冠動脈プラーク を血管内超音波法および血管内視鏡で冠動脈プラークの観察を行い投与48 週で比較検討 し、脂質プロファイルは、低用量群、高容量群で130.9±28.51、130.3±25.5 ㎎/dl、48 週で は、89.7±29.0、61.7±16.5 ㎎/dl と高容量群では低用量群に比して有意にLDL-C の低下を認 めた。血管内イメージングの観察結果では、低用量群および高容量群で血管内視鏡の黄色 度はそれぞれ、2.0±0.7→1.6 ± 1.0(P=0.0011)、2.0 ± 0.7 → 1.5 ± 0.9(p=0.0002)であり両群 でBaseline に比して有意な改善があったが、2 群間に有意差はなかった(p=0.76)。しかし ながら、血管内超音波による観察では、高容量群でプラーク量の減少(-5.1 ± 12.2%)、低 用量群ではプラーク量の増加(3.8 ± 12.8%)が認められ、2 群間に有意差(P=0.005)が認めら れ、高容量群で有意にプラークの減少が確認された。低容量群では血管内視鏡による黄色 度の有意な改善は認めたが、プラーク容量は増加し動脈硬化の進展が確認された。
これまでの研究成果から、スタチン投与を中心とした脂質低下療法は虚血性心疾患の冠 動脈プラークの安定化、退縮することが示された。プラークの安定化・退縮が心血管イベ ントの抑制つながっていることを示唆している。さらに、高容量と低用量のロスバスタチ ンによる脂質低下療法の効果の差異についてALTAIR 試験で比較検討し、高容量スタチン 投与がよりプラーク退縮に効果があることを報告し、The Lower The Better を示す結果と なった。このことは、今後のスタチン以外の薬物を併用し、脂質低下療法を行うことによ るプラークの安定化が期待されることも暗示している。今後のPCSK-9 阻害薬を用いた超 積極的LDL-C 低下療法の有用性について期待されており、しかしながら一方では、脂質低 下療法の残余リスクが問題となっており、創薬を含めた今後の対応が求められている。