精神依存を起こす薬物は中脳辺縁系dopamine(DA)神経活動を促進する。中脳辺縁系DA神経が投射する側坐核には,麻薬性鎮痛薬のmorphineをはじめとするopioidの作用点であるopioid受容体のδおよびμ受容体が分布している。これらの受容体はコードする遺伝子がいずれも1種類とされているものの,δ1とδ2,µ1とμ2の2種類のサブタイプがそれぞれ存在すると想定されている。これまで私達は側坐核のδ1,δ2,µ1受容体の選択的刺激で同部位のDA放出が増加することと,このDA放出の促進には発現するδおよびμ受容体のサブタイプが異なるGABA神経の脱抑制が関わる可能性を指摘してきた(Saigusa et al., Pharmacol Rep, 2021)。一方,δおよびμ受容体は側坐核のacetylcholine(ACh)介在神経にも発現することが示唆されている。本講演では,無麻酔非拘束ラットを用いたin vivo脳微小透析法による神経化学実験で検出した側坐核の細胞外ACh放出に対するδおよびμ受容体のligandの効果を指標として,これらの受容体のサブタイプが脳内のACh神経活動制御において果たす役割について考察する。