ヒトiPS細胞技術は、医薬品開発における有効性・安全性評価での利用が期待され、産官学による検証が進んだ。特に、医薬品による心電図のQT間隔延長ならびに致死性不整脈の発生リスクに関しては、ICH(医薬品規制調和国際会議)においてヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いたフォローアップ試験の議論が進行中である。  これまで我々はヒトiPS細胞由来心筋細胞の電気活動を多点電極アレイシステムにより記録する方法を確立し、致死性不整脈を高精度に予測できることを国内検証試験により明らかにした。また、米国FDA(食品医薬品局)による国際コンソーシアムCiPA(Comprehensive in vitro Proarrhythmia Assay)が実施した致死性不整脈に関する多施設検証試験においても実験データセットを提出し、試験法の再現性や信頼性を明らかにすることに成功した。これらの大規模な多施設検証試験の比較検討を行い、ヒトiPS細胞由来心筋細胞が予測性の高い安全性評価法として社会実装するうえで必要なベストプラクティスを取りまとめて公表した。  そこで本シンポジウムでは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞による新たな試験法の開発と今後に向けた課題について議論したい。