[1-P1-PM05] WntシグナルがYAPを介して歯胚の形態形成を制御する分子基盤の解明

Author: 〇長野 良子、清島 保、藤井 慎介
Affiliation: 九大 院歯 口腔病理
Abstract: 遺伝子改変マウスにおける歯原性上皮特異的なWnt/β-カテニンシグナルの活性化により、歯牙腫が発生することが報告されている。最近、私共の研究室では、その分子基盤を明らかにした。即ち、歯胚器官培養においてCHIR99021(GSK-3阻害剤)刺激によりWnt/β-カテニンシグナルを活性化させたところ、細胞増殖抑制に伴う歯胚の形態異常が生じることを報告した(Sci Rep. 2019)。また、この形態形成の異常は細胞増殖の亢進だけでは回復しないことを見出した。これらのことから、Wnt/β-カテニンシグナルは細胞増殖に加え、他の分子基盤を介して歯胚の形態形成に関与すると考えられたが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では、Wnt/β-カテニンシグナルが歯胚の形態形成を制御する分子基盤を明らかにすることを目的とした。歯原性上皮細胞においてCHIR99021刺激により発現変動した遺伝子群について、マイクロアレイ解析結果を用いてKEGG pathway解析を行ったところ、器官の形態形成に関わるYAPシグナルが抑制されていた。そこで、歯原性上皮細胞においてCHIR99021刺激したところ、YAPシグナルの下流遺伝子の発現が抑制された。さらに、その抑制はCHIR99021刺激依存的なβ-カテニンの活性化による転写共役因子YAPの発現減少に依存していた。また、胎生15日のマウスより摘出した帽状期歯胚の器官培養において、日数経過と共にWnt/β-カテニンシグナルの活性は低下していくが、YAPシグナル下流遺伝子の発現は上昇していた。一方、この器官培養においてCHIR99021刺激するとYAPシグナルは抑制された。これらの結果から、歯原性上皮においてWnt/β-カテニンシグナルはYAPの発現制御に依存したシグナル伝達の活性化を介して、歯胚の形態形成を制御する可能性が示唆された。

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