[1-P1-PM37] 軸索誘導因子Sema3Aによる唾液腺形態形成および腺様嚢胞癌の増殖制御メカニズムの解明

Author: 〇藤本 龍史1、藤井 慎介2、清島 保2
Affiliation: 1九州大学病院 臨床教育研修センター、2九大 院歯 口腔病理
Abstract: 最近、発表者らの研究室では、Wntシグナルによって発現制御された軸索ガイダンス因子Semaphorin3A(Sema3A)とその下流シグナルが、歯胚上皮の増殖を介して歯胚発生を制御する分子基盤について明らかにした(Sci Rep. 2019)。発生過程において、歯胚と唾液腺は共通する分子基盤を有していることが知られているが、Sema3Aシグナルが唾液腺の発生に与える影響は不明である。そこで、本研究では唾液腺の発生と唾液腺を発生母地とする腺様嚢胞癌(ACC)におけるSema3Aシグナルの役割を明らかにすることを目的とした。マウス胎生13日目の顎下腺を摘出し、器官培養をしたところ、時間経過と共に形態形成が促進(腺房数、細胞数、総面積の増加および分化マーカー遺伝子の変化)した。この培養系にてWntシグナルがSema3Aの発現に与える影響について検討したところ、CHIR99021(GSK3β阻害剤)の濃度依存的にWntシグナルが活性化し、Sema3Aの発現が抑制された。またACC細胞株においても、阻害剤濃度依存的にSema3Aの発現が抑制された。マウス顎下腺器官培養法において特異的阻害剤を用いてSema3Aの機能を抑制すると、顎下腺の断面積、腺房数、増殖細胞数およびAKTのリン酸化が抑制された。またACC細胞株においても同様に、AKTのリン酸化および増殖が抑制された。加えて、Sema3Aを外因的に発現させると、増殖の抑制とAKTのリン酸化の抑制が回復した。本研究の結果より、唾液腺の発生過程においてWntシグナルがSema3Aの発現を制御すること、およびSema3A-AKTを介した増殖制御メカニズムが唾液腺の形態形成および腺様嚢胞癌の増殖に必要であることが明らかとなった。

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