[1-P1-PM39] フェニトインの細胞内Ca2+排出抑制作用による作動性Ca2+応答の増強

Author: 〇蓑輪 映里佳1、倉重 圭史1、根津 顕弘2、齊藤 正人1、谷村 明彦2
Affiliation: 1北医療大 歯 小児歯、2北医療大 歯 薬理
Abstract: 抗てんかん薬のフェニトイン(PHT)は,服用者の約50%に歯肉肥大の副作用を起こすことが知られている.その発症にはCa2+シグナルとの関連が提唱されており,PHTがヒト歯肉線維芽細胞(HGF)の細胞内Ca2+濃度([Ca2+]i)を上昇させることも報告されている.本研究ではfura2/AMを使用したライブセルイメージング法を用いて,PHTによるHGFの[Ca2+]i上昇のメカニズム,および生理活性物質によるHGFの[Ca2+]i上昇とPHTの作用について解析した.
HGFにPHT(100μM)を作用させると約90%の細胞で[Ca2+]iが上昇した.このPHTによる[Ca2+]i上昇は,細胞外液にCa2+が存在しない条件でも認められた.次に,小胞体内Ca2+ポンプ阻害剤であるタプシガーギン(ThG)でストアを枯渇させた状態でのPHTの作用を検証した.2μMのThGによる[Ca2+]i上昇後に100μMのPHTを添加すると,ThG単独よりもさらに[Ca2+]iが上昇した.これらの結果から,PHTによる[Ca2+]i上昇は,細胞外からのCa2+流入や細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出に依存しないことが明らかとなり,PHTによるHGFの[Ca2+]i上昇には細胞外へのCa2+排出阻害が関与する可能性が考えられた.通常,細胞外液Na+を除去すると,Na+-Ca2+交換体(NCX)の逆回転によって[Ca2+]iが上昇する.この[Ca2+]i上昇がPHTによって抑制されたことから,PHTがNCXを抑制し[Ca2+]i上昇を惹起していると考えられた.PHTによる細胞内のCa2+排出の抑制は,様々な刺激によるCa2+反応を増強することが予想された.HGFを1μMのATPまたは3μMのヒスタミンで刺激すると20-50%の細胞で[Ca2+]iが上昇した.このときATPあるいはヒスタミンに反応しなかった多くの細胞がPHT存在下の刺激によって[Ca2+]iが上昇反応を示した.
以上より,PHTが生理活性物質によって惹起されるCa2+応答を増強することが示された.このことからPHTと炎症性生理活性物質の相互作用が歯肉肥大の発症および増悪に関与する可能性が示唆された.

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