[1-P1-PM42] ラット島皮質抑制性シナプス伝達におけるプリン受容体を介した増強作用

Author: 〇小助川 聖史1、山本 清文2、小林 真之2
Affiliation: 1日大 歯 矯正、2日大 歯 薬理
Abstract: “生物のエネルギー源として知られているadenosine triphosphate (ATP)は,中枢神経系においてグリア細胞から放出され,シナプス伝達に可塑的変化をもたらすことが明らかになってきた.近年,ATPが作用するプリン受容体の大脳皮質における興奮性シナプス伝達についての研究は進んでいるが,抑制性シナプス伝達については未解明である.プリン受容体の一つであるP2受容体は,イオンチャネル型のP2X受容体とGタンパク質共役型受容体であるP2Y受容体に分類される.ATPは容易に加水分解されてADPとなるが,ADPはP2Y受容体にのみ作用することから,シナプス間隙に存在するATPがシナプス伝達を修飾するメカニズムは極めて複雑であることが予想される.そこで我々は大脳皮質の抑制性シナプス伝達の可塑的変化に対するATPの役割を明らかにすることを最終的な目標に設定し,本研究では,ATPの投与に加えて,P2X受容体の選択的アゴニストであるα, β-methylene ATP (αβmATP)の投与による島皮質抑制性シナプス伝達への影響を明らかにした.小胞型GABAトランスポーターに蛍光タンパク質venusが共発現する遺伝子改変ラットであるVGAT-Venusラット(生後 2~4 週齢)から急性脳スライス標本を作製し,ホールセル・パッチクランプ法にて島皮質の抑制性ニューロンである高頻度発火ニューロン(FS)と興奮性ニューロンである錐体細胞(PYR)を同時に記録し,単一抑制性シナプス後電流(uIPSC)に対するATPの作用を検討した.ATP (100 μM)またはαβmATP (100 μM)の投与によりFSの発火頻度の上昇が認められた.さらに,uIPSCに対する効果を検討するために FS → PYRシナプスにてαβmATPを投与したところ,uIPSCの振幅を増大させるのみならず,洗い流し後においてもその作用が長期的に持続することが明らかになった.以上の結果より,P2X受容体の活性化は島皮質における抑制性シナプス伝達を長期的に増強する可能性が示唆された.”

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