[1-P2-PM07] 麻酔ラットへのアトロピン投与がもたらす蒸留水誘発嚥下の変調効果

Author: 〇中嶋 優太、辻村 恭憲、那小屋 公太、吉原 翠、川田 里美、筒井 雄平、井上 誠
Affiliation: 新潟大 院医歯  摂食嚥下リハビリ
Abstract: “目的:抗コリン作用薬の副作用として摂食嚥下機能への影響が懸念されている.本研究は,ムスカリン性アセチルコリン受容体(mACh-R)遮断薬であるアトロピンが嚥下誘発に与える影響を検証した.方法:ウレタン麻酔SD系雄性ラット(n=70)を対象とし,左側舌骨上筋および甲状舌骨筋より筋電位を導出し嚥下活動を記録した.嚥下誘発のために化学刺激として蒸留水,生理食塩水, クエン酸(10-2 M),カプサイシン(10-9-10-5 M)各3 μlを声帯上に滴下した.また,機械刺激として喉頭へのエアフロー刺激(8 ml/s,10秒),電気刺激として右側上喉頭神経(SLN)刺激(4.8-125 µA,30 Hz,10秒)を行った.前処置としてアトロピン(アトロピン群,0.01-10 mg/kg),アトロピンと同様の効果を有するが血液脳関門を通過しないメチルアトロピン(メチル群,1 mg/kg),生理食塩水(生食群)を静脈内投与し,処置前後の嚥下回数を比較した.繰り返し投与による嚥下誘発への影響を懸念し,クエン酸およびカプサイシン刺激は別群間で比較した. 結果と考察:アトロピン群(1 mg/kg)では,蒸留水誘発嚥下回数は処置後有意に増加し,メチル群,生食群では変化がなかった.一方,生理食塩水およびエアフロー誘発嚥下回数は,両群とも処置前後で有意な差はなかった.クエン酸およびカプサイシン誘発嚥下回数においては,両群間で有意な差を認めなかった.SLN刺激誘発嚥下閾値はアトロピン群で有意に低下し,生食群では変化がなかった.以上の結果から,アトロピンによる嚥下誘発効果は脳内に発現するmAch-Rが関与していると示唆された.今後は,関連脳領域とmACh-Rサブタイプの同定を行う予定である.”

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コメント

  1. 小林真之 より:

    大変興味深く拝見しました。メチルアトロピンを使われているところなど特に興味深く読ませていただきました。
    不勉強でお恥ずかしいのですが教えて頂きたいことがあります。幾つかの手法で嚥下を誘発していますが,それらが生じるメカニズムはかなり違うものなのでしょうか?末梢での受容体はもちろん違うと思いますが,関わる中枢神経回路の相違があれば教えて頂けると大変有り難いです。その違いがムスカリン受容体に対する感受性の原因とお考えなのでしょうか?

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