[2-P1-P36] TGFβ3ノックアウトマウスにおけるEGFR阻害剤投与によるMAPKのリン酸化と口蓋裂の表現型の変化

Author: 〇杉山 明子、滝川 俊也
Affiliation: 朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座口腔解剖学分野
Abstract: 【目的】口蓋突起は、左右の口蓋突起の先端が接触し、上皮性縫合を形成した後、上皮性縫合が消失して癒合する。TGFβ3 KOマウスでは上皮性縫合の形成や消失が起こらず、口蓋裂が発症する。EGFの作用はTGFβ3の作用と拮抗すると考えられる。今回、TGFβ3 KOマウスにEGFRに対する阻害剤を投与し、口蓋裂表現型の変化とシグナル伝達分子の活性に与える影響との関係を調べることを目的とした。【方法】C57BL/6J系統の妊娠TGFβ3 KOマウスにEGFR阻害剤を投与し、胎児を取り出して、口蓋裂の表現型と遺伝子型を調べた。また、EGFR阻害剤投与群と対照群の胎児の口蓋組織からタンパク質を抽出して口蓋突起の癒合と関係するシグナル伝達分子のリン酸化状態をウェスタンブロットで解析した。【結果】EGFR阻害剤の投与によりC57BL/6J系統マウスのTGFβ3 KO胎児の完全口蓋裂が不完全口蓋裂に軽症化する例が見いだされた。TGFβ3 KO胎児の口蓋では野生型と比較してErk1/2とp38のリン酸化は有意に低かった。さらに、EGFR阻害剤投与群ではErk1/2とp38のリン酸化は有意に増加したほか、Smad2のリン酸化も増加していた。【考察】TGFβ3は口蓋突起癒合の責任遺伝子であること、その作用はSmad2の活性化を介することが多くの先行研究で示されてきた。しかし、MAPK経路とSmad経路はクロストークしており、MAPKはSmadの活性化に影響を与えることも知られている。今回の研究結果から、TGFβ3 KOマウスにおいて、EGFR阻害剤の投与によりMAPKが活性化され、その活性化されたMAPKがクロストークを介してSmad2を活性化することにより、TGFβ3非依存性に口蓋の部分的な癒合を引き起こしたと考えられる。

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