[2-P1-P37] バルプロ酸曝露ラット胎仔における頭部神経堤細胞(NCC)の形成と移動の攪乱は、脳神経ネットワークの形成異常に寄与している~発達障碍に随伴する食の困難の一因か?~

Author: 〇鈴木 礼子1、今井 元2
Affiliation: 1奥羽大 歯 歯科薬理、2奥羽大 歯 生物
Abstract: 【目的】抗てんかん薬・気分安定薬として汎用されるバルプロ酸(VPA)には、胎児の先天奇形と発達障碍誘発のリスクがある。発達障碍には、臨床的に種々の感覚異常や食の困難が随伴することが知られており、動物実験でも、VPA投与による自閉症モデルラットにおいて顔面神経の発生異常が生じることが報告されている。VPAには、ヒストン脱アセチル化酵素が関与する遺伝子の転写抑制に対する非特異的な阻害作用があるため、VPAによる先天奇形を伴う摂食・嚥下障碍は、頭部NCCの形成や移動を制御する遺伝子発現の攪乱による可能性が高い。そこで、本研究では、ラット母獣に時期特異的にVPAを投与し、頭部NCCの動態を解析することを目的とした。
【材料と方法】SDラットの母獣 (胎齢(E)9.4:頭部神経堤形成期)を用いて、実験群にはVPAを、対照群には生理食塩水を単回投与した。その後、セボフルラン麻酔下で母獣から胎仔を摘出し、E9.75における頭部NCCの脱上皮化、細胞追跡実験を行い、E9.75-E12.75における発生関連因子の発現などをwhole mountの in situ ハイブリダイゼーション/免疫染色などを用いて検証した。
【結果】VPA投与群では、中脳後方から後脳前方で脱上皮化する神経堤の細胞/抗slug抗体陽性細胞が減少し、その移動も阻害された。一方、後脳後方で神経堤の脱上皮化は阻害されず、本来より頭方の第1鰓弓/前頭鼻隆起まで移動した。さらに、Hoxa2 発現細胞も、本来より頭方の前頭鼻隆起/第1鰓弓で観察され、軸索伸長とそのガイダンス因子の発現にも異変を生じた。
【結論】これらの結果から、発達障碍に随伴する食の困難の一因として、頭部NCCの形成と移動の攪乱、及び、その結果として生じた摂食・嚥下に関わる脳神経の機能的ネットワークの形成異常があることが示唆された。

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