[2-P2-P38] NFAT5は高浸透圧下においてEGFRの細胞内局在を変化させて口腔扁平上皮癌の進展を促進する

Author: 〇吉本 尚平1,2、平田 雅人2、橋本 修一1
Affiliation: 1福歯大 病理、2福歯大 口腔医学研究センター
Abstract: 口腔扁平上皮癌には上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor; EGFR)が高発現しており、口腔癌の分子標的治療における重要な標的の一つである。一方、癌微小環境下では慢性的な炎症状態による浸透圧上昇が起こっていると考えられているが、高浸透圧と癌増殖との関連の詳細については不明である。我々は、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3)において、マンニトール添加による高浸透圧刺激により活性化された転写因子Nuclear Factor of Activated T-cells 5(NFAT5)がEGFRの細胞質から細胞膜への移行を惹起し、EGFRシグナル伝達系を活性化することでHSC-3細胞の増殖を促進することを見出した。さらに、浸透圧上昇に伴って、糖鎖修飾に関わる酵素Dolichol phosphate-dependent N-acetylglucosamine 1-phospho-transferase(DPAGT1)の発現上昇と、NFAT5のDPAGT1プロモーター領域への結合がみられたことから、浸透圧上昇に伴うNFAT5依存的なEGFRの細胞膜移行には小胞体でのEGFRに対する糖鎖修飾が関わっていることが示唆された。また、ヒト舌扁平上皮癌症例における免疫組織化学的発現解析では、癌の分化度が低くなるにつれてNFAT5発現が亢進していた。ヌードマウスへ移植したHSC-3細胞に対する高浸透圧腫瘍刺激実験モデルにおいても、高浸透圧刺激が移植腫瘍細胞の増大に寄与している結果が得られた。以上より、ヒト口腔扁平上皮癌における癌微小環境下では、浸透圧亢進によるNFAT5の発現・活性化が、糖鎖修飾を介したEGFRの細胞質から細胞膜への移行を惹起し、EGFRシグナル伝達系を活性化することで癌細胞増殖を促進していると考えられた。

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