[2-P2-P57] 低閾値開口反射の適応変化は咀嚼における最初のサイクルの咬合接触によって獲得された学習記憶に依存する

Author: 〇松永 知子、森田 匠、横田 たつ子、平場 勝成
Affiliation: 愛院大 歯 生理
Abstract: “【目的】咀嚼運動中の低閾値機械受容器由来の開口反射(低閾値開口反射)は, 閉口相と咬合相で抑制されることが知られている.我々は,低閾値開口反射の変調が咬合接触直前の顎位で最も強く抑制され,かつ,作業側と平衡側の間で有意差がみられることを報告してきた. 本研究は,この変調が一連の咀嚼運動中のどのサイクルから起こるのか検討を行った.
【方法】麻酔下のウサギの皮質咀嚼野電気刺激で誘発される咀嚼様運動時の顎運動と顎二腹筋の筋電図を同時に記録した. 咀嚼様運動中の最大開口位 (max-OP)と,閉口相後半で咬合接触直前(end-CL : 開口量約2.6mm) の顎位において, 下歯槽神経の2発刺激(interval : 2ms, 刺激強度 : 1.04T)による低閾値開口反射をサイクル毎に誘発し, 咀嚼開始から6サイクル目までに誘発された開口反射記録を解析した.
【結果】安静時の開口反射振幅を100%とした時,end-CLにおける1サイクル目の振幅は39.4%で,2サイクル目では17.1%に減少し, 3サイクル目以降も14.8%, 9.7%, 16.0%, 12.7%と持続的に減少していた. 一元配置分散分析(ANOVA)の結果, 2~6サイクル目の開口反射の振幅は, 1サイクル目の振幅と比較して有意に小さかった.max-OPでの開口反射も咀嚼運動中に減少したが,その振幅は1サイクル目から順に,安静時振幅の58.3%, 47.8%, 78.1%, 47.9%, 63.0%, 65.1%であり, これらにサイクル間での有意差は認められなかった.
【考察】end-CLの開口量は,ウサギのoverbite量とほぼ一致し,咬合接触の直前であるために歯根膜からの感覚入力が生じていない.しかし,低閾値開口反射は1サイクル目に比して2サイクル目以降で大きく抑制された. これは, 咀嚼運動の最初のひと噛みで顎位を学習し, 2サイクル目以降はその学習に基づいた予測制御により低閾値開口反射の変調が行われている可能性を示唆している.


【利益相反】著者は利益相反がないことを宣言する.”

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コメント

  1. 倉本恵梨子 より:

    鹿児島大学歯科機能形態学分野の倉本恵梨子と申します。
    大変興味深くポスターを拝見いたしました。
    最初のひと噛みで、顎位を学習するのには、どのような神経が関わっているのでしょうか。
    筋紡錘からの感覚も関与しているのでしょうか。
    神経回路など、ご存知でしたら、教えていただけるとありがたく存じます。

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