[3-P1-P77] 神経ペプチドVIP-VPAC2受容体シグナルは、がん細胞遊走を制御する新規の分子機構である

Author: 〇浅野 智志、吾郷 由希夫
Affiliation: 広大 院医 細胞分子薬理
Abstract: “細胞の遊走にはイノシトールリン脂質代謝が必要で、その代謝異常はしばしば癌細胞の転移を促進させる要因となる。細胞が移動する際、遊走細胞の移動端で葉状仮足が形成される。これには、イノシトールリン脂質の一つであり、細胞膜の主成分であるPI(4,5)P2が代謝され、PI(3,4,5)P3が産生される必要がある。PI(3,4,5)P3は細胞膜においてWASP family verprolin homologous protein 2 (WAVE2)と結合する。さらにWAVE2はsmall GTPaseのRas-related C3 botulinum toxin substrate (Rac)と相互作用することで活性型となり、actin-related protein 2/3 (ARP2/3)複合体を介してアクチン重合を促進させ、葉状仮足が形成される。本研究では、血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide: VIP)の受容体の一つであるVIPR2/VPAC2が細胞遊走に関与しているかについて検討を行った。ヒト乳癌細胞MCF-7をVIPで刺激すると、細胞遊走が促進され、VPAC2のノックダウンによって遊走能が減衰した。一方、外来VPAC2を安定発現させると、遊走能はさらに亢進した。また、過剰発現させたVPAC2は葉状仮足に集積し、WAVE2と共局在していた。VPAC2をノックダウンすると、細胞膜近傍のWAVE2やPI(3,4,5)P3が減少し、WAVE2-ARP-actin間の相互作用が抑制されることがわかった。これらの結果は、VIP-VPAC2シグナリングがPI(3,4,5)P3の産生を促進させ、WAVE2が仲介する葉状仮足形成に必要なアクチン重合を調節することによって、癌細胞移動を制御していることを示唆している。”

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