[1-P1-PM20] M細胞は眼周辺領域における免疫監視に寄与する

Author: 〇大谷 祐貴、木村 俊介、長谷 耕二
Affiliation: 慶應大学 薬学 生化学
Abstract: “外部へと露出した眼表面は粘膜免疫システムによって防御されている。異物の排除には涙液中のIgA抗体が主に働く。その産生は抗原が粘膜上皮を通過し粘膜関連リンパ組織へと認識されることで開始する。M細胞は粘膜上皮を構成する上皮細胞であり、物質取り込みを担う細胞である。眼表面と鼻腔をつなぐ鼻涙管の涙嚢には涙道関連リンパ組織(TALT)が存在するが、この部位におけるM細胞の研究は進んでいない。本研究ではTALTにおけるM細胞の分子マーカーと分化機構を解析し、免疫応答への関与を検証した。マウス顔面部から鼻涙管を露出しホールマウント免疫染色を行った結果、鼻涙管の眼側入り口近傍の涙嚢にB細胞の集積を認めた。切片作製後ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、この部位にTALTが存在することを確認した。続いて、複数の腸管M細胞マーカーによる免疫組織染色を行い、GP2, Sox8, Tnfaip2陽性細胞がTALT濾胞関連上皮に存在することを見出した。この細胞は点眼した微粒子を取り込むこと、腸管や呼吸器におけるM細胞誘導因子であるRANKLの腹腔内投与により増加したことから、TALT M細胞であると結論付けた。続いてOVA抗原とコレラ毒素を点眼し免疫応答を誘導した結果、RANKL投与群では涙液中のOVA特異的IgA抗体が増加していた。これはTALT M細胞の増加が眼部の免疫応答を活性化させる可能性を示唆する。M細胞は腸管と呼吸器において解析が行われてきた。これらの組織は単層上皮で覆われる。一方で、TALTを覆うのは重層扁平上皮である。本研究からRANKLのM細胞分化誘導能は上皮の形状に関わらず共通すること、さらに、粘膜上の異物がM細胞を介して重層上皮を越えて取り込まれる機構が明らかになった。本研究の成果を応用することで、点眼による粘膜免疫応答の活性化を利用したワクチン開発につながる可能性がある。”

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