[1-P1-PM22] 矯正的歯根吸収のリチウムによる抑制作用における硝子様変性と破歯細胞の関与

Author: 〇上田 悠依華1、森石 武史2、佛坂 由可3、佛坂 斉祉1
Affiliation: 1長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 歯科矯正学分野、2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科細胞生物学分野、3長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔腫瘍治療学分野
Abstract: 【目的】歯根吸収は矯正治療や再植歯における主な副作用の一つだが、その吸収と修復過程の詳細は未解明であり、歯根吸収の予測と回避は難しいのが現状である。最近、塩化リチウムが矯正力負荷時の歯根吸収に抑制的に働くことが報告されたが、そのメカニズムは不明である。
本研究では、歯根吸収抑制に働くリチウムのメカニズムとして、歯根膜周囲組織と破歯細胞とが共に関与しているとの仮説を立て、硝子様変性(虚血性細胞死)と破歯細胞の発現を検討した。
【方法】ラット雌(10週齢)の上顎第1臼歯-切歯間に矯正装置(コイルスプリング)を装着し、上顎第1臼歯を近心に牽引した。ラットに塩化リチウムを0.64mM/kg毎日腹腔内投与し、3,7,14日にμCTを撮影した。灌流固定後、組織標本を作製し、HE、TUNELおよびTRAP染色を行い、上顎第一臼歯遠心頬側根歯頚部1/3の近心面を評価した。
【結果と考察】矯正力負荷後14日目で顕著な歯根吸収が認められた。相当部位で7日目に破歯細胞が多く観察され、3日目に硝子様変性が認められた。さらに1日目にTUNEL陽性細胞が多く観察され、3日目に少なくなり硝子様変性に変化していく様子が観察された。塩化リチウムを投与した場合、全実験期間を通じて破骨細胞数と破歯細胞数は減少し、3日目に見られた硝子様変性量とTUNEL陽性細胞数、および14日目の歯根吸収量もそれぞれ対照群と比較して顕著に減少した。
【結論】塩化リチウムは、矯正力による硝子様変性、歯根膜細胞の細胞死、および破歯細胞を抑制した。
即ち、リチウムは歯根膜細胞死である硝子様変性を抑制し、引き続く破歯細胞の出現が抑制されることで、歯根吸収を抑制することが示された。

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