[1-P1-PM31] 閉経による血清RANKL濃度の上昇はNF-κB の非古典的経路を活性化し肥満を引き起こす

Author: 〇森 馨代1、溝上 顕子2、佐野 朋美3、兼松 隆3、自見 英治郎1,2
Affiliation: 1九大 院歯 口腔細胞工学、2九大 院歯 OBT研究セ、3九大 院歯 口腔機能分子
Abstract: 肥満で増大した脂肪組織は、炎症性サイトカインを分泌し、脂肪組織や肝臓などに慢性炎症を引き起こす。この肥満による慢性炎症反応は、生活習慣病の病態の基盤となる。閉経後の女性は、内臓脂肪型肥満をきたしやすく生活習慣病リスクが増大するが、その発症機序には未だ解明の余地がある。さて、炎症反応で中心的な役割を担う転写因子のNF-κBは、receptor activator of NF-κB ligand (RANKL)によっても活性化される。我々は、閉経後にRANKLの血中濃度が上昇することに着目し、RANKL-NF-κB経路の活性化が閉経後の脂肪蓄積の一因ではないかとの仮説を立て、本研究を行った。 野生型マウスの骨髄細胞をRANKLで刺激すると、TNFαのmRNA発現は2相性に上昇した。このTnfαの発現変化は、第1相が古典的経路に第2相が非古典的経路に依存することをNF-κB古典的経路阻害剤を用いて確認し、経路依存的に炎症反応が制御される可能性を示した。本研究ではNF-κBの非古典的経路に焦点をあて、閉経後肥満の発症機構を解析するために、非古典的経路の活性化が障害されているaly/alyマウスを用いて実験を行なった。野生型およびaly/alyマウスの卵巣を摘出(OVX)した閉経モデルマウスを高脂肪・高ショ糖食の自由摂餌下で飼育した。野生型マウスでは、OVX後10週の間に脂肪細胞の肥大、脂肪組織の炎症、肝臓への異所性脂肪蓄積が起こり、インスリン抵抗性、耐糖能異常を示した。一方、OVX施行で野生型同様にaly/alyマウスの血清RANKL濃度は上昇したにも関わらず、野生型で認めた脂肪蓄積・炎症は抑制され、全身の糖代謝の異常も抑制された。これらの結果は、RANKL-NF-κB の非古典的経路の活性化が、閉経後の肥満を引き起こす要因となることを示している。

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コメント

  1. 石崎 明 より:

    岩手医科大学の石崎明と申します。この度は、これまでの貴教室での素晴らしい研究成果をさらに発展されるような内容でのご発表をいただきまして、まことにありがとうございました。たいへん勉強になりました。もしお許しいただけるようでしたら、以下のように三点ほどの質問をさせていただけましたら幸いです。

    1)Results 1や3に用いたbone marrow cellsとはどのようにして得られた細胞集団(培養方法など)でしょうか?付着細胞(間葉系)か浮遊細胞(血球系)か、またはその両方なのかにつきまして教えていただけましたら幸いです。

    2)aly/alyマウスは確かにNIK遺伝子の自然突然変異マウスとして知られていますが、自然突然変異ということですので、NIK遺伝子以外の変異も同時に存在する可能性があるものと思われます。例えば、Result 3Bの実験で、aly/aly由来bone marrow cellsにNIK遺伝子をノックイン(遺伝子導入による強発現)するとWT由来細胞とaly/aly由来細胞との間での差が認められなくなるなどの結果が示されれば、本研究の結論づけのさらなる根拠立てとなるのではないかと思うのですが、このような実験は試されておられるでしょうか?教えていただけましたら幸いです。

    3)Non-canonical な経路とは別に、Canonicalなシグナル経路が閉経後の肥満に関係しているどうかかについて判断できるような実験はお試しになっておられるでしょうか?教えていただけましたら幸いです。

    以上となります。たいへんお忙しいところご面倒をおかけしまことに恐縮ではございますが、何卒よろしくお願い申し上げます。

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