[1-P2-PM10] ステロイド軟膏による口内炎疼痛抑制機序の解明

Author: 〇浪花 真子1,2、中富 千尋1、人見 涼露3、松田 一成4、小野 堅太郎1
Affiliation: 1九歯大 院歯 生理、2九歯大 院歯 口腔保健、3日大 歯 生理、4第一三共ヘルスケア株式会社
Abstract: 口内炎は多くの人が経験したことのある粘膜疾患である。治療薬にステロイド軟膏がよく処方されるが、口内炎疼痛への効果は意見の一致をみず、詳細な疼痛抑制機序は不明である。本研究は口内炎疼痛に対するステロイド軟膏の効果と作用機序を口内炎モデルラットを用いて検討することを目的とした。ステロイドの確実な奏効には軟膏基剤の口腔内での長期残存が必要であると考え、プラスティベース(PB)、トラフル軟膏基剤(TO)など多種の軟膏基剤の付着性と残留性を評価した。その結果TOが最も残留性に優れていたため、動物実験では高残留性基剤としてTO、低残留性基剤としてPBを使用し、ステロイドのトリアムシノロンアセトニド(Tmc)を添加して実験を行った。雄性Wistarラットに酢酸誘発性口内炎を作製した。軟膏を2回塗布した後、各群に以下の評価を行った。行動学的解析にて自発痛と接触痛を測定した。グルココルチコイド受容体(GR)標的遺伝子とTNF-αCOX-2の遺伝子発現を定量性RT-PCR、ET-1とPGE2のタンパク質量をELISAで定量した。短時間および長時間のTmc作用に対する高張機械刺激(Hyper)およびTRPA1アゴニスト(AITC)誘発応答への影響を調べるため、ラット三叉神経節細胞にCa2+イメージングを行った。自発痛と接触痛はTO+Tmc群でNT群と比較して抑制された。GR標的遺伝子の発現はTO+Tmc群でNT群より増加し、TNF-αCOX-2は低下した。PGE2はTO+Tmc群で有意に低下した。低残留性軟膏(PB+Tmc)群は作用なし、作用があってもわずかであった。Ca2+イメージングの結果、Tmc長時間作用でHyperとAITCによる反応細胞は有意に減少し、AITCによるCa応答も低下した。本研究により、口内炎治療用軟膏の残留性が薬効に大きく寄与していることが示唆された。高残留性ステロイド軟膏はCOX-2の発現を抑制することで自発痛を抑制し、神経終末上のTRPA1の応答性を低下させることで接触痛を抑制させる可能性が示唆された。

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コメント

  1. 小林真之 より:

    大変興味深く拝見しました。薬理学で抗炎症薬を教えている身として知らなかったことが数多くあり大変勉強になりました。
    恥の上塗りになりますが,一つ教えて頂きたいことがあります。ステロイド薬でPG産生を抑制することで,痛みを減少させるのは,感覚ニューロンに対する効果であって,炎症を起こしている上皮細胞などに対する効果ではないという理解でよろしいでしょうか?

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