[1-P2-PM22] 肺炎球菌のニューモライシン依存的な鼻粘膜バリア傷害と脳への伝播機構の関連

Author: 〇高原 悠樹1,2、住友 倫子1、山口 雅也1、中田 匡宣3、川端 重忠1
Affiliation: 1阪大 院歯 口腔細菌、2阪大 院歯 クラウンブリッジ 、3鹿大 院医歯 口腔微生物
Abstract: “細菌性髄膜炎は、主に上気道常在細菌が血行性に血液脳関門を介して髄膜へ伝播することにより発症すると認識されてきた。しかし、鼻咽腔から血流中への細菌伝播を決定づける因子や血液脳関門を破綻させる分子機構は不明である。我々はこれまでに、鼻咽腔に定着した肺炎球菌が嗅覚神経経路を介して非血行性に脳内へ到達する髄膜炎マウスモデルを構築した。本研究では、構築したマウスモデルを用いて、肺炎球菌による鼻粘膜上皮バリアの傷害と細菌の脳伝播機構の関連を検証した。
中耳炎由来の肺炎球菌EF3030株 (血清型 19F) をマウス (Balb/c, メス, 6週齢) の鼻腔内に感染させ、非血行性髄膜炎モデルとした。脳組織ホモジネート中の菌数測定と感染組織の免疫蛍光染色により、鼻粘膜上皮に定着する肺炎球菌が、嗅神経の軸索を介して脳組織へ侵入する現象を認めた。嗅球、大脳、および小脳への肺炎球菌の伝播は、ニューモライシン遺伝子 (ply) の欠失により有意に低下したが、ply の再導入により野生株と同程度にまで回復した。また、組換えニューモライシンの経鼻投与により、ply 遺伝子欠失株は野生株と同程度の脳伝播能を呈した。野生株感染群の鼻腔洗浄液では、非感染群と比較して、細胞間接着分子群の転写を抑制するSnail1 遺伝子の発現上昇と、E-カドヘリンの発現低下を認めたが、ply 欠失株感染群では非感染群と同程度であった。
以上の結果から、肺炎球菌のニューモライシンはSnail1 依存的に鼻粘膜バリアを傷害し、嗅神経経路を介した細菌の脳組織伝播に寄与することが示唆された。

【会員外共同研究者】河野 正充, 保富 宗城 (和歌山県立医科大学・耳鼻咽喉科・頭頸部外科)”

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コメント

  1. 吉田明弘 より:

    興味深いご発表ありがとうございます。データとの直接的な関係はありませんが、嗅神経の軸索を介した感染経路において、感染による嗅神経自体の破壊は起こるのでしょうか。嗅覚刺激に対する忌避反応の消失等のデータがございましたら、お答え出来る範囲でご教示いただければ幸いです。

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    • 高原悠樹 より:

      吉田明弘先生

      ご質問いただきありがとうございます。
      感染により嗅神経自体が破壊されるかどうかに関して、現段階では検討しておりません。
      しかし、嗅神経経路に着目した私の研究では、先生にご指摘いただいた点は非常に重要な現象だと思います。
      共同研究を行っている耳鼻咽喉科の先生方とも相談し、今後の課題とさせていただきます。
      貴重なご意見をいただきありがとうございました。

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