[1-P2-PM23] プロタミンおよび 3-methyl-4-isopropylphenol 共処理によるEnterococcus faecalis に対する抗菌性

Author: 〇阿部 優
Affiliation: 明大 院理 応用化学 生物化学
Abstract: “歯髄の細菌感染により誘発される根尖性歯周炎は完治が難しく、予後不良の根尖からはグラム陽性通性嫌気性細菌Enterococcus faecalis (E. faecalis) が頻繁に検出される。現在、根管治療における殺菌剤には主に次亜塩素酸ナトリウムが使用されており、E. faecalis に対しても有効性が確認されている。しかし、効果の発現には高濃度かつ長時間の処理を要すると報告されており、細胞毒性の観点から生体に対する安全性が懸念される。そこで本研究では、生体に対してより安全な薬剤の探索を目的として、サケ白子由来の抗菌ペプチドであるプロタミンに着目した。プロタミンは種々の口腔内細菌に対する広い抗菌スペクトルに加え、細胞膜の破壊, 細胞膜透過による代謝阻害といった複数の抗菌作用機序を有する。したがって薬剤耐性菌も生み出しにくく、有用な代替剤になり得ると考えた。はじめに、E. faecalis に対してプロタミンを単独処理したところ、増殖速度を大幅に低下させたものの、十分な殺菌効果を得られなかった。この原因を調査するため、蛍光標識を施したプロタミンを用いて蛍光顕微鏡による観察を行った。その結果、プロタミンは主にE. faecalis の細胞膜表面に局在しており、細胞膜を透過し細胞内部へと侵入できていないことが判明した。そこで細胞膜の破壊を誘発する試薬、3-methyl-4-isopropylphenol (IPMP) とプロタミンを併用処理したところ、E. faecalis に対するプロタミンの細胞膜透過率は有意に増加し、それに伴い高い殺菌効果が確認された。本研究の結果は、IPMP による細胞膜損傷がプロタミンの細胞膜透過を促進し、抗菌性を増大させることを示した。これは根管治療における殺菌剤の選択域を広げ得る可能性を含む。”

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