[1-P2-PM44] なぜ口腔細菌の誤嚥で肺炎が悪化するのか? ─歯周病原菌によるMUC5AC発現とムチン産生の誘導─

Author: 〇横江 将1、渡辺 典久1,2、佐藤 秀一1、今井 健一2
Affiliation: 1日大 歯、2日大 歯 細菌
Abstract: 【背景及び目的】近年、周術期口腔機能管理の重要性が高まり、医科歯科連携による口腔ケアが広く行われている。特に有病者においては、術後の摂食嚥下機能の低下により口腔細菌を含んだ唾液や食物残渣を誤嚥する機会が多く、誤嚥性肺炎発症のリスクも高い。しかし、口腔細菌がどのように肺炎の発症に関与しているのか、なぜ肺炎の予防に口腔ケアが有効なのかは解っていない。呼吸器におけるムチンの過剰産生は喀痰過多の原因となるのみならず、気管支の狭窄をもたらすことから呼吸機能の低下に繋がる。そこで今回、口腔細菌がムチンのコア蛋白であるMUC5ACの発現を誘導するのではないかと考え本研究を企画した。【方法と結果】P. gingivalis (P. g.) 培養上清は呼吸器上皮細胞株において濃度依存的にMUC5ACの発現を誘導した。本作用は、P.g.の病原因子(LPSと線毛)では認められなかったことから2種類のジンジパイン(KgpとRgp)に着目した。ジンジパイン欠損株を用いた実験から、P.g.によるMUC5ACの発現には特にRgpが深く関与していることが明らかとなった。同様の結果は、プライマリー気管支上皮細胞を用いた実験においても認められた。さらに、マウスにP. g.培養上清を誤嚥させた結果、マウス肺においてもMUC5ACの発現とムチンの産生がP.g.により強く誘導された。【考察】我々はこれまでに、歯周病原菌が肺炎球菌等の受容体と炎症性サイトカインを誘導することを見出しているが、今回新たに、P.g.がジンジパインを介してMUC5ACの発現を誘導し、ムチンの過剰産生を引き起こすことにより呼吸機能の低下に関与していることが示唆された。

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コメント

  1. 内藤真理子(長崎大) より:

    Rgpの関与ということはPARを介しての刺激と考えてるのでしょうか?Rgpの酵素活性阻害剤やPARのアゴニストを使うと影響されるのでしょうか?

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