[1-P2-PS01] 3次元培養システムを用いた口腔癌の薬剤応答性に対する新規in vitroモデルの検証

Author: 〇佐藤 晃平1、小野 喜章2、河合 穂高3、中野 敬介3、長塚 仁3、佐々木 朗2
Affiliation: 1岡大 歯 、2岡大 院医歯薬 口腔顎顔面外科、3岡大 院医歯薬 口腔病理
Abstract: 癌研究における医薬品開発では創薬スクリーニング試験の一環として、培養細胞を用いた試験が行われている。しかし従来の単層培養法は生体内の本来の状態と比較すると、複雑な腫瘍環境を反映できないことが課題である。一方で、近年in vivoの生理学的環境により近く、従来よりも優れたモデルとして3次元培養法が注目されている。3次元培養は腫瘍組織と類似した生育環境を模倣することができ、薬剤処理に対する生体応答の予測などが可能とされている。本研究では口腔癌細胞を用いた3次元培養法の確立を目指し、その実用性検証のため、抗癌剤を用いた口腔癌の薬剤応答性を調査した。【方法・結果】ヒト口腔癌細胞株SASとHSC-3を用いて3次元培養を行ったところ、球状の細胞塊(スフェロイド)を形成した。スフェロイド溶解液を用いたウエスタンブロット法により、細胞接着分子E-cadherinとClaudin-1の経時的な増強を認めた。回収したスフェロイドのパラフィン切片を作製、H-E染色を行ったところ、各細胞株特有の分化傾向を示し、いずれも顕著な管腔構造を認めていた。また中心部に壊死領域を認め、細胞増殖マーカーKi-67を用いた免疫染色法によりスフェロイド辺縁部にて多数のKi-67陽性細胞を認めた。シスプラチンおよびセツキシマブを各スフェロイドに作用したところ、両細胞ともシスプラチン作用群では濃度依存的に細胞接着の喪失・スフェロイド崩壊による抗腫瘍効果を認めたが、セツキシマブ作用群では各細胞株のEGFR発現と相関的に抗腫瘍効果を示した。【結論】口腔癌細胞株を用いたスフェロイドは、臨床組織像と類似した構造・特性を有していた。今回用いた抗癌剤2剤の結果の違いは臨床的意義を反映している可能性があると考えられた。将来的に口腔癌患者の組織検体から腫瘍スフェロイドを作製し、固有の機能性を維持した状態で薬剤スクリーニングへの応用や個別診断・治療法の開発へと進展していける可能性がある。

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