[2-P2-P50] 疼痛刺激は島皮質自発活動を増強する

Author: 〇大橋 一徳、小林 秀太朗、小林 真之
Affiliation: 日大 歯
Abstract: 大脳皮質の神経細胞集団は特定のタスクや外部刺激がなくとも、機能コラムや脳領野といった特定の情報を処理する機能構造を再現した同期活動を恒常的に出現させており、この秩序構造を持った脳内活動は自発活動と呼ばれている。近年、客観的診断が困難な慢性痛患者の自発活動は健常者と異なることが機能的脳画像法により明らかとなり、痛みという主観的な感覚を脳の自発活動によって評価する方法が確立されつつある。一般的には、繰返される急性痛が慢性痛へ転化するといわれているが、慢性痛へ移行した時点において自発活動が変調しているのであれば、急性痛自体も自発活動を修飾している可能性がある。そこで、本研究では慢性痛に伴う自発活動の変化が確認されている島皮質に着目し、歯根膜電気刺激が島皮質自発活動にどのような影響を与えるのかについて,GCaMP6sマウスにカルシウムイメージング法を適用して検討した。 その結果、自発活動中に出現する侵害情報表現、つまり、歯根膜刺激によって賦活される島皮質内の脳領域が,歯根膜刺激を与えない状態においても有意に賦活化されることが明らかとなった。また興奮性ニューロンの自発神経発火活動を二光子顕微鏡で観察したところ、ニューロンの活動性と同期性が歯根膜刺激後に増強されることが確認された。すなわち、マクロレベルで同定された歯根膜刺激による島皮質における応答領域に存在するニューロンが自発的に活性化されることを明らかにすることが出来た。これらの結果は、侵害刺激自体が惹起する疼痛に関わる神経回路の可塑的変化には、自発活動による回路の可塑的変化が含まれることを示唆しており、自発活動の増加が急性痛から慢性痛へと転化する機構に貢献している可能性を示している。

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