[2-P2-P52] セボフルランによる長時間の全身麻酔は14日齢のマウスの海馬神経細胞にアポトーシスを誘導する

Author: 〇奥村 陽子1、永井 亜希子2、池田 やよい2
Affiliation: 1愛知学院大学歯学部麻酔学講座、2愛知学院大学歯学部解剖学講座
Abstract: “【背景】乳幼児期の長時間や複数回の全身麻酔経験は成長後に学習障害を生じるという報告がげっ歯類やヒトで多くある.この学習障害は,麻酔薬が幼若な脳神経細胞にアポトーシスを誘導し,記憶に関わる神経回路の構築を長期的に妨げるために生じると考えられている.これまで,6~7日齢のマウスで全身麻酔後に脳神経のアポトーシスや,成長後の学習・記憶行動異常について多く報告されているが,この日齢はヒトの胎児期に相当する1).そこで我々は,ヒトの乳児期に相当する14日齢のマウスをセボフルランで長時間全身麻酔し,その直後の海馬の神経細胞のアポトーシスとミクログリアを検出した.【方法】14 日齢の野生型C57BL/6 Jマウスを,麻酔群(n=4)と対照群(n=4)に分けた.麻酔群は3%セボフルランで6時間全身麻酔し,対照群は空気下で6時間絶食させた.両群ともそれぞれの実験の直後に4%パラホルムアルデヒドにて経心灌流固定して6μmのパラフィン切片を作成し,cleaved caspase 3抗体とIba1抗体を用いて海馬の神経細胞のアポトーシスとミクログリアを免疫組織学的に検出した.【結果】Cleaved caspase 3抗体陽性細胞は,対照群では歯状回の神経新生部位に少数みとめられたのみであったが,麻酔群では歯状回の神経新生部位以外にもみとめられた.Iba1抗体陽性細胞は,対照群ではcleaved caspase 3抗体陽性細胞とは個別に存在していたが,麻酔群ではIba1とcleaved caspase 3が二重標識された細胞がみとめられた.【考察】今回,14日令の野生型マウスの海馬神経細胞は,セボフルランの長時間暴露によってアポトーシスを起こした細胞数が増加した.このため,ヒトの乳幼児期における長時間のセボフルラン麻酔は,海馬神経細胞に急性期変化を起こす可能性がみとめられた.このことが成長後の学習・記憶形成異常に影響する可能性があると考える.【文献】1)Workman AD, et al, J Neurosci, 33: 7368-7383, 2013.”

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コメント

  1. 小林真之 より:

    大変興味深く拝見しました。臨床的に大変意義のある研究と感じました。
    ひとつ教えて頂きたいことがあります。歯状回には興奮性の顆粒細胞の他に何種類か抑制性細胞が存在していると思うのですが,セボで特に脱落した細胞の種類というのはあるのでしょうか?素人質問で大変申し訳ありません。ご教示頂けると大変勉強になります。

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