[2-P2-P54] ラット島皮質GABA作動性抑制性シナプスで生じるGABAB受容体依存的なLTP誘発メカニズムの解明

Author: 〇山本 清文1、千喜良 緑1,2、小林 真之1
Affiliation: 1日大 歯 薬理、2日大 歯 麻酔
Abstract: 口腔顔面領域を支配する神経の損傷は,異所性疼痛や痛覚過敏を惹起する。その原因の一つとして,損傷後に中枢神経系に可塑的変化が生じ,口腔顔面領域の感覚情報が入力する大脳皮質島領野(IC)の神経回路の組換えが生じることが挙げられる。皮質の抑制性ニューロンであるfast-spiking細胞(FSN)は錐体細胞(PYN)の興奮を強力に抑制することが知られている。したがって,このFSN-PRNシナプスに長期増強(LTP)を生じさせることで,損傷時のICヘの異常な興奮入力やPYNの過剰興奮が抑制され,ICの感覚異常を軽減できる可能性がある。そこで我々は,VGAT-Venus遺伝子改変ラットから急性脳スライス標本を作製し,ホールセル・パッチクランプ法にてICの複数のニューロンを同時に記録し,FSN–PYNシナプスで単一抑制性シナプス後電流(uIPSC)を記録した。これまでの研究で,シナプス前ニューロンであるFSNにθ burst刺激を与えるとuIPSCにLTPまたは長期抑制(LTD)応答が認められている。また,θ刺激前に算出され連続刺激によって誘発されたuIPSCの振幅比(PPR)とθ刺激後のuIPSC振幅のLTP/LTDの大きさの間には有意な正の相関が認められた。GABAB受容体はGi共役型受容体であり,シナプス前終末に発現して伝達物質の放出を抑制することが知られている。そこで,GABAB受容体遮断薬であるCGP52432を投与したところ,LTPの発生が抑えられた。一方,同受容体の作動薬baclofen(10 µM)を灌流投与すると,既報と同様,投与中に振幅が減少したが,逆に1 µMのbaclofenでは,投与中の振幅には変化を認めず,wash-out中に振幅の長期増強とPPRの減少が認められた。これらの結果は,FSN–PYNシナプスで生じるLTPがシナプス前終末の放出機構の修飾によって生じること,ならびにその機序の一部に終末に発現するGABAB受容体が関与している可能性を示唆する。

メールで問い合わせ

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました