[2-P2-P55] 肥満病態下における歯周病感染が引き起こす認知機能障害の機序の検討

Author: 〇大植 香菜1、山脇 洋輔2、兼松 隆3
Affiliation: 1広島大 病院 歯科麻酔科、2第一薬大 薬 薬物治療、3九大 院歯 口腔機能分子
Abstract: 【背景】 歯周病は、アルツハイマー型認知症の危険因子でもあり、歯周病による認知機能障害では、ミクログリアの炎症応答が関与すると考えられる。また、肥満病態では、脂肪から分泌させるアディポカインの産生調節が破綻し、全身の慢性炎症を引き起こすとともに、脳ではミクログリアの炎症応答が亢進する。本研究では、肥満マウスに歯周感染を惹起させ認知機能へ与える影響を解析するとともに、アディポカインの1つであるレプチンが歯周病原細菌であるP. gingivalis由来のリポ多糖(PgLPS)が誘導するミクログリアの炎症応答へ与える影響を検討した。
【材料と方法】 12週齢のマウス(C57BL/6、雄)に高脂肪食を18週間与えて作成した肥満モデルマウスに、 P. gingivalis生菌108 CFUを週2回5週間口腔内に塗布し、Y迷路試験および新規物体認知試験を行った。その後海馬と血液サンプルを採取した。培養ミクログリア細胞(MG-6)をレプチン前処理したのち、PgLPSで刺激後培養上清と細胞を回収した。炎症性サイトカインの遺伝子発現や放出は定量的PCR法とELISA法により評価した。
【結果および考察】肥満マウスでは高レプチン血症および、海馬においてミクログリア活性化マーカであるIba1の発現上昇を認めた。歯周病細菌を経口塗布した肥満マウスにおいてのみ新奇物体認知試験で認知機能が低下した。また、レプチン処理はMG-6においてIba1の発現を増加させ、PgLPS刺激による炎症性サイトカインの放出を増加させた。さらに、この培養上清を培養神経細胞 (Neuro-2A)へ作用させたところPgLPS単独刺激群よりも高い神経細胞障害性を示した。これらの結果は、肥満下での歯周病感染は、認知機能を低下させ、これにはレプチンによるミクログリア活性化に由来する炎症性サイトカインなどの液性因子が引き起こす神経細胞障害が関与する可能性を示している。
【共同研究者】広大・院医系科学・歯周 水野智仁、應原一久

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コメント

  1. 小林真之 より:

    大変興味深く拝見しました。肥満と歯周病原菌,ミクログリアとの関係がよく分かり勉強になりました。
    不勉強でお恥ずかしい限りですが,一つ教えて頂きたいことがあります。レプチンがIba1の発現を増加させるとのことですが,海馬のニューロンに対する直接的な作用は生じていないのでしょうか?ご教示頂けると大変助かります。

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