[3-P1-P81] 内耳前庭刺激を介する誤嚥性肺炎の予防・軽減効果

Author: 〇安部 力
Affiliation: 岐阜大 院医 生理
Abstract: 誤嚥性肺炎は,現在の死亡者数約4万人が2030年には約13万人と約3倍に増加すると予想されており,その対策は喫緊の課題となっている。高齢者では年齢・体力的要素や疾患の背景があるため,誤嚥性肺炎を発症してからの治療は難しい。さらに,複数の薬を服用している可能性も考えられる。このため,「薬に頼らない」予防対策を講じる必要がある。「薬に頼らない」予防手法のひとつとして,自律神経の活性化による免疫系の賦活化がある。我々はこれまで,炎症が起きる前に電気や光でマウスの迷走神経を刺激すると,その後に生じる炎症が抑えられることを明らかにしてきた。この経路では,自律神経の中枢である延髄C1ニューロンへの刺激が交感神経を介して脾臓免疫細胞を活性化していることがわかった。さらに,我々は,内耳前庭器刺激により延髄C1ニューロンおよび交感神経を活性化できることを明らかにしてきた。すでに,ヒトでの経皮的内耳前庭器電気刺激手法を確立していることから,この系を明らかにすることで,新しい誤嚥性肺炎の予防手法が期待される。そこで本研究では,マウスを用いて,内耳前庭器への刺激による延髄C1ニューロンを介した誤嚥性肺炎の予防および重症化軽減効果を調べた。誤嚥性肺炎は,気管内挿管によるLPS投与により引き起こした。オプトジェネティクスを用いて延髄C1ニューロンを特異的に活性化すると,気管内洗浄液(BAL)中のTNF-α値は有意に抑えられた。また,組織学的に,内耳前庭器から前庭神経核を介した延髄C1ニューロンへの投射がわかった。さらに,内耳前庭器への重力刺激にてBALのTNF-α値は有意に抑えられ,この効果は前庭器破壊により消失した。これらの結果から,内耳前庭器への刺激は延髄C1ニューロンを介して誤嚥性肺炎を予防・軽減できることが示唆された。

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