[3-P2-P112] 顕微フーリエ変換赤外分光法による銀染色を施したう蝕象牙質の観察

Author: 〇桑田(楠瀬) 隆生1、渡辺 新2、布施 恵3、楠瀬 有紗4
Affiliation: 1日大松戸歯 教養生物、2日大松戸歯 組織、3日大松戸歯 教養化学、4大塚くすのせ歯科
Abstract: 【目的】う蝕部の正確な検出は,二次う蝕や過剰な歯質の切削を防ぐ上で極めて重要である。象牙質う蝕は,細菌感染の影響が大きい外層と,感染の影響を受けた内層に大別されるが,演者らは市販の銀染色液により,その象牙質う蝕に特徴的な層構造を確認できることを明らかにした.この結果は,銀染色法のう蝕検知への応用の可能性を示しているが,銀染色によるう蝕検出の機序や安全性を理解する上で,染色によってう蝕各部で形成される銀化合物の同定は重要である.そこで本研究では,顕微フーリエ変換赤外分光法(micro-FTIR)を用いて銀染色により象牙質う蝕で生じる銀化合物の同定を試みた.【材料と方法】う歯を約0.5mm厚に切断後,象牙質う蝕から健常象牙質までの各部位をmicro-FTIRにより測定した.その後,う歯切片を市販の銀染色試薬で染色し,染色前に測定した部位と同じ部位を再びmicro-FTIRで測定した.【結果と考察】銀染色前後でう歯切片の赤外吸収スペクトルを比較すると,染色後ではう蝕象牙質,健常象牙質共に,染色前に比べてリン酸基由来と推定されるピーク強度が低下していた.これは銀染色の過程での酢酸溶液中を用いた処理によって,う歯切片表面が脱灰された可能性を示している.う歯の銀染色ではリン酸銀などの形成が予想されたが,これまでのところ銀化合物由来と推定されるピークが確認できていない.リン酸銀などの銀化合物は光などの影響で容易に金属銀へと変化することが知られており,今回の結果は銀染色後のう蝕部でも金属銀への変化が生じている可能性を示している.現在,データの詳細な分析を進めると共に,染色法の最適化を試みている.本研究は JSPS 科研費21K10236の助成により行われた.

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