[3-P2-P113] 矯正用ブラケット撤去後のエナメル質耐酸性に関する研究

Author: 〇柬理 頼亮1、長谷川 優2
Affiliation: 1日本歯科大学新潟生命歯学部病理学講座、2日本歯科大学新潟短期大学歯科衛生学科
Abstract: 【緒言】矯正用ブラケット(ブラケット)を除去後の歯面に残留した接着剤が、その後のう蝕抵抗性に与える影響はいくつかの研究がなされているものの、視覚的・数値的に捉えた報告は極めて少ない。本研究は、歯面に残留した矯正用接着剤がその後エナメル質表面の耐酸性に与える影響を検討したものである。【材料と方法】本格的矯正歯科治療に伴い抜歯された、ヒト上顎第一小臼歯エナメル質表面を清掃・研磨後、唇側面に直径6mmの円状マスキングを施した。次いで、歯冠部全域にトップコートを塗布・乾燥後にマスキングを除去し、直径6mmの円状にエナメル質表面が露出する状態とし、実験群と対照群とに区分した。実験群は光重合型矯正用接着剤(トランスボンド,3Mユニテック,東京)でブラケットを装着、24時間後にそれをブラケットリムーバーで除去後、歯面研磨を行った。対照群は歯面研磨のみでブラケットを接着しなかった。実験群・対照群を共に0.1M乳酸に浸漬し、唇側面を人工的に脱灰した。脱灰開始から2,4,6,8,10日目にμCT装置(ScanXmate、コムスキャンテクノ,神奈川)で撮影後、3D画像解析ソフトウェア(Molcer、ホワイトラビット,東京)により脱灰域を抽出し、表面積と体積を計測した。【結果】脱灰部分の表面積・体積は、対照群で脱灰4日目から急激に増加し、10日目で40.2±22.9 mm2・1.39±1.01 mm3と脱灰領域が広がった。実験群では2日目から脱灰がみられ、表面積・体積は10日目で20.6±16.1 mm2・0.66±0.64 mm3となった。【考察および結論】実験群の脱灰域が対照群のほぼ1/2なのは、ブラケット接着前に酸処理したエナメル質表層から接着剤が浸透し、脱灰に対する抵抗性を示したと考察する。矯正治療後の歯面は耐酸性が得られていることが明らかとなった。故に、ブラケット除去後にエナメル質内に浸透した矯正用接着剤を完全に除去するよりも,むしろ研磨により表面を滑沢にすることが重要といえる。

メールで問い合わせ

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました