[3-P2-P133] 前喉頭蓋領域の組織学的構造解析から導き出される新たな嚥下メカニズムの構築。

Author: 〇北村 啓1、菊池 布恵1、小川 雄大1、笠原 典夫1、松永 智2、山本 将仁2、阿部 伸一2、山本 仁1
Affiliation: 1東京歯科大学組織・発生学講座、2東京歯科大学解剖学講座
Abstract: 前喉頭蓋領域とは、舌骨・喉頭蓋軟骨・甲状軟骨をつなぐ複数の靱帯に囲まれた領域を指す。中でも、舌骨と喉頭蓋軟骨をつなぐ舌骨喉頭蓋靱帯は解剖学的な構造解析が完全でないため、嚥下時の運動メカニズムに多くの矛盾が存在する。そこで我々は、舌骨喉頭蓋靱帯の3次元的な構造特性を明らかにすることを目的とし、新たな嚥下メカニズムを考案した。試料として、東京歯科大学所蔵の19献体から舌・喉頭を一塊に採取した。3体を肉眼観察、16体を組織学的観察に用いた。組織学的観察では通法に従ってパラフィン包埋を行い、半連続大切片を作製し、矢状、前額、水平方向から切断した。得られた大切片にH-E染色および、エラスチかマッソン染色を施し、光学顕微鏡、光学スキャナにて観察を行た。喉頭蓋谷粘膜下では、舌骨喉頭蓋靱帯が喉頭蓋軟骨の外側縁に付着し、太い線維束として認められた。この靱帯は正中に向かうに従い、喉頭蓋軟骨の下縁に付着する細い線維束へ変化していた。一方、正中舌喉頭蓋ヒダ粘膜下では、舌骨後方の間隙が舌喉頭蓋靱帯を2層の線維束に分けていた。このうち上部の線維はオトガイ舌筋と筋腱接合部を形成する太い腱であり、下部の線維は舌骨と喉頭蓋の最下点をつなぐ脆弱な靱帯であった。以上の結果より、喉頭蓋前方には直接筋と接合する能動的な構造が存在することが明らかとなった。そのため、喉頭蓋の後屈時は舌骨に誘導された舌骨喉頭蓋靱帯が喉頭蓋の基部を持ち上げ、オトガイ舌筋の弛緩が喉頭蓋の後屈をサポートしている。反対に喉頭蓋の復位時は舌骨が元の位置に戻ることで喉頭蓋の基部を引き下げ、オトガイ舌筋の収縮により喉頭蓋が前方へ持続的に牽引されている可能性が示唆された。

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