[2-P1-P33] 体内の栄養状態を反映したマウス味細胞におけるmechanistic target of rapamycin(mTOR)活性化

Author: 〇高井 信吾1、岩田 周介1,2、實松 敬介1,2,3、重村 憲徳1,2
Affiliation: 1九大 院歯 口腔機能解析学、2九大 五感応用デバイス研究開発セ、3九大 OBT研究セ
Abstract: mechanistic target of rapamycin(mTOR)は様々な臓器で細胞分裂や生存において重要な働きを持つセリンスレオニンキナーゼである。mTORの活性は、インスリン等の成長因子や、糖、アミノ酸等の栄養因子の情報を反映し、細胞の成長と代謝を調節している。近年、腸管では、上皮幹細胞の分化・増殖活性にmTOR経路が関係していることが明らかとなってきている。味蕾は腸管と同じ上皮幹細胞から発生し、素早いターンオーバーを繰り返しながらも組織恒常性を維持しているが、その分化・増殖の調節機構には不明な点が多い。本研究では、マウス味蕾におけるmTOR発現に着目し、その機能探索を試みた。ます、in situ hybridizationの結果、mTORのmRNAは、有郭乳頭部で味蕾を含む上皮と乳頭基底部に強く発現していることがわかった。味蕾幹細胞を採取し3次元培養を行う味蕾オルガノイドを用いた実験系では、培地中にラパマイシン(mTORC1阻害剤)を添加すると、その濃度依存的に味細胞の増殖および各種味細胞マーカーmRNA発現の有意な増加が見られた。mTORはp70 S6K(S6キナーゼ)を直接リン酸化することでタンパク質合成や細胞増殖を促す。マウスを用いた実験では、24時間の絶食後、2時間の給餌を行うと、一部の有郭乳頭味細胞および味蕾基底部の細胞で強いS6キナーゼのリン酸化が観察された。この時、リン酸化が見られた細胞の数は、再給餌を行わないマウスに比べて有意に多かった。また、この給餌による味蕾のmTOR経路の活性化はラパマイシンの事前投与でほぼ完全に消失した。以上の結果から、味蕾内の一部の細胞は体内の栄養状態を感知し、mTORを活性ダイナミックに変化させていること、また、このmTOR活性化が味細胞の分化・増殖に関与する可能性が示唆された。

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