[3-P2-P122] 骨芽細胞分化におけるHypoxiaが及ぼす影響の解析

Author: 〇千葉 紀香1、成 昌奐2、大西 智和1、松口 徹也1
Affiliation: 1鹿大 院医歯 口腔生化、2鹿大 院医歯 顎顔面外科
Abstract: 培養細胞を用いた研究は、通常は大気の酸素分圧下(Normoxia、約20%)で行われるが、実際の生体内での細胞周辺環境は基本的に著しい低酸素状態(Hypoxia、骨組織では8%以下)にある。マウス個体をhypoxiaの環境で飼養すると骨梁が有意に減少することや、取り出した骨芽細胞による石灰化能が低下するなどの報告があり、酸素環境の違いが骨芽細胞の分化や機能に影響を及ぼすと考えられるが、その現象における分子生物学的な詳細については未だ明確な知見が得られていない。本研究では、酸素濃度の違いが骨芽細胞の分化や石灰化誘導能に及ぼす影響をin vitroを主体として分子生物学的に比較検討し、将来的には骨再生医療における効果的な促進ファクターの同定を目的としている。まず、マウス前骨芽細胞株であるMC3T3-E1をそれぞれnormoxia(20% O2)とhypoxia(2% O2)の環境下で骨芽細胞分化培地(ODM)にて一定期間培養を行い、分化に伴う骨分化マーカー遺伝子の発現量の違い(リアルタイムPCRやウエスタンブロッティング)や、石灰化誘導能の差(アリザリンレッド染色)などを比較した。石灰化誘導能については、normoxiaではODMによって誘導される高度な石灰化が観察されたが、hypoxiaでは顕著な低下が確認された。骨分化マーカー遺伝子の発現量は、Runx2やAlpl、Bglap、Spp1などはhypoxiaによって発現の低下がみられたが、一方でSp7やIBSPなどは発現の上昇がみられた。骨芽細胞による石灰化自体はhypoxiaによって低下しており、骨芽細胞分化の特に初期段階に重要なマーカー遺伝子の発現も抑制を受けることが分かったが、一方で分化の後期段階に重要とされるSp7やIBSPはその発現の増強がみられており、骨芽細胞の分化段階によって酸素濃度が異なる影響を与える可能性が示唆された。

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コメント

  1. 竹本 史子 より:

    ①アリザリンレッド染色で12日でかなり染色されていますが、毎回同じような結果になるのでしょうか。
    ②ウェスタンブロットでβ-actinがダブルバンドになることはあるでしょうか。もし可能であれば抗体等教えていただけないでしょうか。
    ③HypoxiaでosterixやBSPが上昇しているにもかかわらずRunx2やALPが減少したことについてはどのように考察されてますでしょうか。
    メカニズムについてのお考えがありましたら、教えていただけたらと思います。

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    • 千葉 紀香 より:

      ご質問ありがとうございます。

      ➀毎回同じように染色が見られます。AA2P+bGPでも7~10日もすればはっきりとした染色が検出されます。また、この実験では石灰化を助長するためにCaCl2を添加しています。もしご自身でやられていて染色がうまくいかないようであれば、添加していないのであればCaCl2の添加、または細胞株のpassage numberが若いものを使用すると改善されるかもしれません。

      ②β-actinが二重になっているのは経験したことがありません。抗体に関しては当教室からの過去の論文に詳細がありますのでご覧ください。

      ③OsterixはRunx2-independentの経路もいくつか報告があります。Hypoxiaとそれらの関わりなどをこれから調べていくつもりですので、ここで詳細を述べることは遠慮させていただきます。ご了承ください。

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